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コラム/
さよならカセットMTR



 Pro Tools謳歌のデジタル・レコーディング成熟期におけるレトロスペクティヴなアナログ・カセットMTRの逆行的使用――。
TASCAM PORTA STUDIO 464 [Dodidn*]では、デジタル・サウンドに味付けをする意味で、カセットMTRを現役として用いたこともあったし、その実験で「QY-700の音を探る簡易レコーディングテスト」をおこなったし、即興曲「ETERNAL」「野ばら」などでも大活躍してくれた。また、故障などのトラブルも相次いで、たびたび異なった機種を新たに入手することもあり、分解というハプニング(ブログ「424MKIIと464の分解部品移植の話」)もあった。もはや、通算何台所有していたか把握できていない。
 さらにコラム「MIDI STUDIO 644アーカイヴ」では、90年代の、私のカセットMTR全盛時代に活躍した名機TASCAM MIDI STUDIO 644についてまとめている。興味のある方はそちらを先に読んでいただきたい。

 私にとってこういった古い機材を扱う意味合いは、単なる懐かしさを実機で味わうためではなく、あくまで実務としての、その独特なサウンドの持ち味を引き出すための道具として復古していた。

 そうしてついに、その役割を終える――。入手したカセットMTRの度重なるトラブルもまた、懐かしい思い出となったが、実務としての役割は、もうこれで良いのではないか、と思った。
 今、これを書いている私の手元には、YAMAHA CMX100がある。これが私にとっての、最期のカセットMTRであり、これが壊れたら完全撤退である。

 忘れがたき90年代のカセットMTR謳歌時代では、メンテナンスが欠かせず手間がかかった。磁気テープがヘッドやピンチローラー、キャプスタン・ゴムに擦れ続けるのだから、それらの箇所が摩耗し、いずれくたばる。クリーニング液と綿棒を用い、それらの箇所を毎度掃除して、くたばる寿命をできる限り延ばす。そうそう、消磁というメンテナンスもあった。
 そうやって丁寧に使っていても、テープレコーダーというのはどこかおかしくなってくるものだ。3トラック目だけが、RECレベルが低くなる…。そのうち、2トラック目も低くなって、いよいよステレオのバランス調整が難しくなる…。メイン機器であるから、そうした音質の劣化に対して非常に神経質になり、ストレスを感じることもあった。

464のレコーダー部 2010年代に入って、また再びカセットMTRを現役復帰(デジタル・レコーディングと併行使用)させるとは思ってもみなかった。入手してきたカセットMTRのほとんどは、どこか一点以上、故障箇所を抱えていたものの、健気に働いてくれた。そして見事に散っていった。

 さよならカセットMTR。そのマルチ・トラック・レコーダーの“実務機”としての、終焉。retirement。
 これを通じて、音楽に与える根源的な《温かみ》の真理を、磁気テープとの関係において学んだ、と思っている。この経験は、デジタル・レコーディングにおいても活かさねばなるまい。

〈了〉
(2014.09.16)

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