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Electro Pop/Movie/Podcast
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魚の賛歌 [2015 Special Edition]

Produced and Vocal Performed by Utaro
Lyrics by Takahiro Kurihara
Composed by Setsuo Kosuge
Copyright ©1993,2015 ZICO HIHAN SHOW All Rights Reserved.

リアル―歌うことは生きること 

 
 私がやりたかったことはただ一つ。歌うこと。酒で喩えれば、“淡麗生”ビールのような味わいのサウンドで作り上げること。
 この「魚の賛歌 [2015 Special Edition]」は、1993年オリジナル「魚の賛歌」の音源や2012年ヴァージョンの音源を部分的にサンプリングし、そういったサウンドを含んだバックグラウンドの複数のパートをミックスさせて、それを聴きながらヴォーカルを新たに吹き込んだ。
 
 まるで、深海に潜った潜水艇内部で歌っているかのような、ある種の神秘さと、空間的違和感と、不穏な心情の代弁を伴っており、「魚の賛歌」のイメージを幾分か変えてしまっている。しかし私は、歌そのものを別の何かにねじ曲げることが無意識のうちにできなかった。「魚の賛歌」は「魚の賛歌」なのである。これをもっとコミカルにすることも、もっとシリアスにすることもできない。それがまさに、「魚の賛歌」のリアルであり、バックグラウンドの深海サウンドから突き出た、“淡麗生”のヴォーカルなのである。
 
 1993年オリジナル「魚の賛歌」のヴォーカル・レコーディングでは、当時私はこれをまともに歌うことができなかった。
 マイクロフォンの前に直立し、何度かリハーサルを繰り返した挙げ句、MTRのRECボタンが赤く点滅したまま、しばらくテープを回すことができなかった。録れない、歌えない…という思いが頭を駆け巡り、パニックに陥った。この曲のメロディのリズムを掴むことも、音程を保つことも、悲喜劇の情緒ある歌詩を掌握することも難しく感じられ、茫然自失と立ち尽くしてしまったのだ。
 そのため、当時のヴォーカル・レコーディングでは、数小節ずつ区切って何度も何度も歌を録り直し、全体の体裁を整えるしかなかった。私にとって「魚の賛歌」は難易度の高い曲で、心情的に相当距離をおきたい曲だったのである。
 
 そうしたリアルな経験から20年以上経過し、私は今、まったく別のリアルをこの「魚の賛歌」で経験した。
 歌うことは生きること。そこにリズムや音程があるのではない、それらは自分で作るもの、感じるもの。悲喜劇は自分の心の中にあり、その内面にこそ、本当の「魚の賛歌」があるのである。

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